「大谷・会津 東北仏レポート」

2001年2月。記録的な大雪の中、雪をかき分け、かき分け、たどり着いた古い寺々。
仏像を守る地元の人達との温かい交流。そして、会津の仏はすごかった!

「仏像レポート編」と「番外編」の二本立てでおおくりします!

大谷・会津 仏像レポート 
PHOTO:最高顧問/ユウコ ヤーマダ TEXT:Natsu/最高顧問

1.大谷観音:
会津地方へいく前に、大谷石で有名な、栃木県大谷にたちよりました。洞窟を切り出して掘られている千手観音は日本最古の石仏。弘仁元年、弘法大師の作と伝えられている。薄暗い証明の中、浮かび上がる千手観音はなんとも神秘的なオーラを放っていた。隣の部屋には同じく大谷石で掘られた阿弥陀、薬師、釈迦の三尊がおられる。柔らかそうな岩肌に、石ころが混じっていて、まさに「豆おかき」状態。ななめにせり出した岩肌に彫られているもんだから、マンガチックな仏が3Dでせまってきて、かなり楽しめる。

またここには小さな宝物館もあり、これまた縄文最古の人骨の展示も!復元図には笑えた。


この不気味な岩肌の奥に、千手がいるのだ!


2.中地(なかち)大仏:
この阿弥陀如来は丈六サイズで、3メートルはあろうか。木造阿弥陀像としては東北最大のもの。しかしなんといっても肩幅が狭い!肩をすくめて寒くて凍えているかのように見える。
修理のとき、肩の部分を削っちゃったそうで。
らほつは渦巻き。生え際のカーブは最高顧問もお気に入りだ。

この大仏の一番の売りは、いつでも出動できるように木車(コロコロ)の上に安置されていることだ。火災などがあったときにも一番にこの仏像を助け出せるようにとの事。泣ける。


説明しよう!中地大仏の座る壇には車輪がついている!前面の仕切りも、緊急時にははずすことができるのだ!

中地大仏を守る地元のえらいおじさんが、じきじきに説明をしてくれました。

3.千手堂:
山奥にひっそりとたたずんでいる小さなお堂。がっちりとした厨子の中には小柄な千手観音。彩色はほとんどなく、木肌そのものをいかした造りで指先まできれいに残っている。表情は内に強さを秘めたようなりりしいお顔。

このお堂は、おばあちゃんがひとりで守っている。足が悪いのに、一生懸命雪道を登ってきてくれました。おばあちゃんありがとうっ!


ほらもう階段だって雪にうもれて・・・
こんなときに若いモンが訪ねてくるんだから地元の人もびっくりしてました。

これが地方の仏か?と目を疑うほど、雅な雰囲気のただよう千手観音。東北仏といえども、こんなハイカラな御方もいるんですね!

4.立木観音:
今回の旅のメイン!背丈8.5メートルもあり現在も床下に根のある一木造。拝観料を払っても、この仏像の前にはおおきな垂れ幕が下がっており、両端からのぞくようにして見仏しなければならない。しかし圧巻、背後には28部衆を始め、風人、雷神までそれっているというオールキャスト。「これだけ揃っているのは清水寺とここくらいなものだ」と自慢気に解説されたが、できれば垂れ幕を全部上げて欲しかった・・・。


大雪で、みやげ物屋もこのとおり


28部衆のみなさまと一緒に記念撮影。
カーテンの裏には、巨大な観音がいるのだ!

今回の旅は、仏以外にもいろいろなアトラクションがありました。

高柴デコ屋敷は、いやげ物の宝庫!
古い屋敷で天狗などの張子人形をつくっている。といっても、ひなびた集落ではなく、観光スポットなのだ。秘宝館も充実!(笑) 正座しているおかめの人形。これをひっくりかえすと、秘宝館ならではのアイテムがおがめるのだ!
また、謎の交通標識看板もみのがせない。

事故ゼロは 余裕で築く 親子の会話 楽しいルール

という、まったく意味不明(笑)の言葉の羅列に、誰しも異次元空間へ誘われる。
ここの「おいち茶屋」にいる、おいちばあちゃんは、志村けんの「だいじょぶだぁ」のギャグのモデルになった有名なばあさんとのこと。


おいちばあちゃんとナゴむ

日本酒、ラーメン、北の味
会津といえば、酒と喜多方ラーメン! ラーメン屋の行列にもめげず、本場喜多方ラーメンをいただく。酒蔵も見学してきました。

 

番外編:
今回の旅の首謀者、成島毘沙門氏が語る

「メイキング・オブ・福島ツアー」

ユウコ・ヤーマダ(マイ・パートナー)の発案及び「成島毘沙門」を名乗るからには、どうしてもこのツアーを成功させねばならない。そんな思いからオレはある秘策を思いついた。題して、
『地方ブツがみやこブツに互角に戦える(あえて勝つとは言わない)方法』だ!

地方の名も知れぬブツが奈良・京都の国宝級メジャー軍団ブツに勝てるわけないのは皆さんの知るところ。だが待てよ!個性豊かな地方ブツたちが結束し、団体戦に持ちこめば勝てるかも?そんな思いつきからはじまった。

解説しよう。
剣道などの団体戦は5人で戦う。先鋒・次鋒・中堅・副将・大将だ。強いのが一般に大将・先鋒・副将と言われる。3勝すれば勝ちだ。この方式を福島見仏に応用してみた。
先鋒 大谷観音 栃木所属だが、冬期欠場の会津・勝常寺の代役で出場依頼
次鋒 中地大仏 未知のブツ。デカサが売りか?
中堅 千手院観音 未知のブツ。話では優雅らしい
副将 柳津虚空蔵 ブツは無いが、全体に風情あり
大将 立木観音 インパクト大。福島の大黒柱

このメンバーで今回挑んでみた。先鋒・大将で確実に勝ち、残り3人の奇襲で1勝を狙う戦法に賭けたのだ。果たして最高顧問・専任教授らのハートをがっちりつかむ事ができるか???

結果...

先鋒 大谷観音 立体遠近が極端。専任教授曰く:タイタニックの舳先についてるみたい!
次鋒 中地大仏 脱出装置及び修復で無くなった肩幅がいい味出した
中堅 千手院観音 木目を生かしたみやこに通じる美しさ及びばあちゃんの存在がグッと来た

予想外の次鋒・中堅の活躍に、なんと早くも勝負あってしまった!
そこで余裕が出たので冒険してみた。副将を急遽変えることにした。ブツとは全く関係無い民俗芸能(性文化含む)代表を選んだ。

副将 高柴でこ屋敷 天狗の面やら性器をモチーフにした数々の逸品に賛否両論
大将 立木観音 デカイことはいいこと。もったいぶって幕を降ろしているのもグッド

4勝1分!

ということで、今回のツアーは個人的にもかなり印象が残ったナイスなものだったのではないかと思っています。見る順番にこだわることで気分の高まりや、藤山寛美的「おもしろうて、やがてかなしくなる」感じ方などにも影響するのではないかな〜と(固い考えじゃなく、あくまでも見仏ですよ〜)。

どうです!皆さんも地方ブツを見たくなったでしょう!!それでは!

 

 

みなさんの感想

ユウコ:
福島・会津と栃木もちょっと。仏はもちろんのこと風景も人もあったかいのだ。 なんでだろ〜なんでだろ〜。 お寺の方も「あ!」と思い出しては腰を上げ、あらゆる資料を持って来てくれるし。 (でも世に広めたい!!と言ってる割には、写真入り資料じゃないのさ) ガイドブックにも仏巡にも載っていない、千手院の千手観音が今のMY仏です。 たいへん美しいお姿でございました。 他に印象に残ったことは、、、こけしが集合すると怖いことと、 こけしパズルはいらないことと、ミニ無事かえるは、ちょっと欲しい。 あと、置物を、ひっくり返し裏を見る癖がついたことです。           <終わり>

はにぃ:
今回の旅行で考えたことは日本の政治、教育についてです。
会津で出会った住職さんが言ってたけれど、こんなに身近にこんなに素晴らしい仏像がいるってのに、最近の人間はそれすら気付かないでしょ?
それが美術的な興味としても、信仰の対象としての興味としてもね。私が学校でならった美術や歴史だってほとんど世界、しかも西洋の比重が高いよね。
でもそれってやっぱりいけないんだよ。
自分たちの持っているものを知ってからじゃないと、外に目を向けたところで比較のしようがないじゃない。自分たちの持ってる文化に自信と誇りがもてないじゃない?戦争が終わってからアメリカの真似をする日本。
本当は、日本はもっとすごいんだもん。
自分たちの持っている文化をもっと大切にしていかないと。
今回会った仏さまはみんな地元の人に大切にされていてしあわせそうだった。
私たちのおじいちゃん世代の人たちが細々とだけれど大切にお守りしてた。
だけど次の世代はどうなるんだろう?ってとても心配になっちゃうよ。
そういう気持ちを育てるためにも、学校の教育現場が日本という国について考え直さなきゃだと思いました。


日仏会へお便り

21/MAY 2001

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