日仏会レポート部門
仏像は、時代によって姿が違う!


 飛鳥から室町、江戸へ、仏像の姿は少しずつ変わってきています。

それは、時代背景、クライアントの要求など、いろいろな条件があるんでしょう。
ここでは、大学で文化財の勉強をしている季史子さんが、時代による様式のちがいをわかりやすく説明します。

《時代区分の話(日本仏教彫刻史概論)》

 一般に飛鳥仏・白鳳仏などというのは美術史上で区分するための言葉です。政治史・社会史等の区分とは一致しません。区分の目安になるのは様式の違いです。目、鼻、口それぞれの形や互いのバランス、頭と体のバランス、肩や胸の肉付き、衣の厚さやしわの形、ひじの張り具合、等々いろんな部分にそれぞれの時代の特徴が表れています。また仏像の作り方も時代によって違うので、そこからも区分できます。

<飛鳥時代>(西暦538〜662年頃)

 まずは飛鳥時代。円筒形の頭部、それに続く円筒形の頸部、さらに続く円筒形の胴部。人間味のない作り笑顔。加えて完全な左右対称。神秘的、厳格な精神性などといった言葉で表されるこの時代の仏像ですが、丸太をつなぎ合わせたような像容からはユーモラスな印象を強く受けます。推古13年(605)の飛鳥大仏から、法隆寺献納宝物中の辛亥(651)年銘菩薩立像までを飛鳥時代とするのが今のところ定説になっています。代表は法隆寺金堂釈迦三尊像。
ほうら、これが飛鳥仏。左右対処でしょ?(最高顧問)

<白鳳時代>(662頃〜710)

 次に白鳳時代。この時代になると仏像はグッと人間に近づきます。まん丸で張りのある顔、肉体を感じさせるなめらかな体のライン。薄い衣の下にある白く柔らかいお肌が想像されます。目元はさわやかでいかにも賢そうです。気のせいか飛鳥仏に比べて明るい性格をしてそうに思えます。白鳳時代は大阪野中寺の丙寅(666)年銘の弥勒菩薩像から始まり中宮寺の弥勒菩薩像で締めくくりとされています。代表は旧山田寺仏頭・法隆寺大宝蔵殿夢違観音像。

山田寺仏頭は、日仏会クリエイティブ部門で見られるよ!(最高顧問)

<天平時代>(710〜794)

 お次は天平時代。さらに写実性が進みます。写実的といっても普通の体格の人間を想像してはいけません。筋肉質のお相撲さんを想像しましょう。元横綱3代目若乃花現藤島親方とか元横綱千代の冨士などが如来に最適です。キーワードは豊か、どっしり、弾力性、高貴な精神性、均整のとれた体つき、のびやか、といったところです。白鳳時代に展開された写実性に基づいた理想化がこの時代では成功しています。代表は薬師寺金堂三尊像・東大寺戒壇院四天王像・法華堂諸像。

<平安前期>(794〜969頃)

 そして平安前期。まさに密教美術の時代です。彫りが鋭く深くなり神秘性が復活しますが、飛鳥彫刻とは違った威圧感、重量感、官能的な神秘性にあふれていると言えます。彩色も良く残っているのでまるで生身の人間のように、体温を感じることができ、非常にエロチックです。代表は神護寺薬師如来像・東寺講堂諸像。 

<平安後期>(969頃〜1190頃)

 平安後期は定朝様式、いわゆる藤原美術の時代です。豊かで均整の取れた体躯、繊細で優美な流れるような衣文、過剰さを除きつつも抑揚ある動感、と堂々たる表現に洗練された貴族的文化を感じることができます。またこの頃に唐が滅亡したため大陸との交流が途絶えており、日本独自の文化つまり和様が展開されました。仏師定朝の没後は弟子がそれぞれ円派・院派・奈良仏師といった3系統の仏所で定朝様式を受け継いでいきました。代表は平等院鳳凰堂阿弥陀如来。余談ですが、相撲取りの貴の浪関がそっくりです。

<鎌倉時代>(1190頃〜1390頃)

 鎌倉時代は仏教美術史の締めくくりの時代です。写実が復活します。天平時代とは違い、まさに写実。引き締まったボディーにくっきり目鼻立ち、明快な衣の動き。そして知的な表情。こういった様式は運慶・湛慶父子と快慶の3人の慶派仏師によって完成されました。代表は奈良興福寺無著像、東大寺南大門仁王像、東大寺公慶堂地蔵菩薩立像、八幡殿僧形八幡神坐像、高知市雪蹊寺毘沙門天・吉祥天・善膩師童子。

 

 

 

龍燈鬼は、建保3(1215)年、
運慶の弟子康弁がつくったそうです。(最高顧問)

 湛慶の没後、仏教彫刻は急速に衰退していき、江戸時代になると仏教そのものの宗教的な力も小さくなり、仏師は形を伝え守るだけになって独自の様式を展開することはありませんでした。しかしこうした中で、湛海・円空・木喰という僧侶が造った仏像は独特の味わいを持っています。

文/季史子さん

 これで、基本を押さえることができたんじゃないでしょうか?
仏像を見る目も変わるってもんですね。室町以降の話は、こないだ仏像相談室で話題になったばかりです。

東北のマンガ仏、遠野の仏は、ナニ様式になるのかな?
なんていうアナタ、このさい、そんな深いことは考えない考えない!(笑)

最高顧問


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16/NOV 2000

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