一般の方からのリサーチ依頼


質問

先日東大寺三月堂に久しぶりに行ってきました。
時代も作風も違ういろんな仏像がごっちゃになってて 相変わらずおもしろいとこですが、
日光、月光菩薩の違いが いまだに分かりません。
よろしければ、外観、役割など、両菩薩の違いについて 教えてください。
よろしくお願い致します。
      

 

最高顧問の回答

リサーチ部門で「ああ涙!日光・月光菩薩の感動秘話」の予告をしてから、はや5年の月日が経ってしまいました。(^_^;)
ずいぶんとお待たせしてスミマセン。構想5年(?)、制作90分。ついに語られる、日光月光のお話でーす!

日光、月光(がっこう)菩薩は、薬師如来の脇侍として造られるのがほとんどでして、薬師如来さんのサポートに徹しています。
「薬師如来本願経」によりますと、両者とも薬師如来と同じ薬師瑠璃光浄土(やくしるりこうじょうど)という所に住んでまして、以下のような担当をうけもつそうです。

  • 日光菩薩
    千の光りを発して、世の中を照らし生死や苦しみの闇を消滅させる。
  • 月光菩薩
    たくさんの菩薩に率先して、薬師如来の説く教えを守る役目を担う

姿形については、普通は上半身裸でスカートを履いているのがポピュラーな姿で、日輪、月輪(がちりん)を、宝冠や手に持った蓮華につけていることがあります。薬師寺の日光月光さんはその典型でしょうか。

さて、ご質問の東大寺三月堂(法華堂)の日光月光ですが、そういう姿ではありませんで、暖かそうな衣の袖を垂らして、合掌しています
このお二人は「日光月光菩薩」ということで、制作当初から日光月光を造ろうとしていたのかどうか、定かではないそうです。
朝日新聞社の「日本の国宝」では、当初から三月堂に置かれていたというよりも、戒壇堂の四天王とセットだった可能性があると述べた後、以下のように書いています。


この一対の像は、一見するといずれも静かな雰囲気をたたえている。しかし、着衣を見ると日光仏がやや広く胸を開き、全身にわたって太い衣文を繁く刻むのに対し、月光仏は丸首の下衣(かえ)を着け、胸元の開きは小さく、衣文も袖の周囲に限られている。着衣表現によって静と動の対比を表現したといえようか。


日光月光菩薩は、たとえば日光が左手を上げていれば月光は右手をあげるといったように、左右対称に作られることが多いそうです。そういう意味では、三月堂の日光月光もお互いの対比をうまく表現しているのですね。

日光月光で有名なのは、三月堂と、薬師寺、東寺...そして関東にお住まいなら鎌倉の覚園寺はオススメ!流麗な宋調様で、雨水でも染み込んだのか、卵形のハンサムな顔を左右に真っ二つにする割れ目が痛々しくも美しいです。

 


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4 APR 2000

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