書名 入江泰吉と歩く
大和路仏像巡礼
著者 写真・入江泰吉
文・田中昭三
出版社 ウェッジ
出版年 2007年9月
ISBN 978-4-86310-005-3
定価 1890円
サイズ A5
読みやすさ ★★★★☆ 4
(写真が多くてサクサク読めます)
専門性 ★★☆☆☆ 2
(視覚的に楽しむ本なので・・・)
写真多用 ★★★★★ 5
(全頁の半分は写真です)
お手ごろ感 ★★★★☆ 4
(意外と持ち歩き向きかも)
写真芸術性 ★★★★★ 5
(文句なし。6つ付けたいくらい)
最高顧問の書評
  大和路を愛した写真家、入江泰吉の傑作仏像写真を軸に、大和路の著名な仏像を紹介しています。。
  仏像写真に関して言えば、土門拳と並ぶ双璧といっても過言ではない入江泰吉だけあって、どの像の写真も「仏像写真」の域を超越した、芸術品として納められています。有名どころの仏像だけあって、どれも自分も一度は目にしたことがあるものでしたが、「入江泰吉が撮るとこんな顔になるのか」と新たな発見をすること数知れず。

  「入江泰吉の撮った、大和路の仏像写真集」としても十二分に価値のある本でしたが、巻末にある「入江泰吉物語」にはたと考えさせられる一文がありました。仏像を撮り始めた頃の入江泰吉の言葉の引用です。

「しかし考えてみれば、仏像は本来、芸術作品であるより前に、祈りをささげる神聖な偶像である。造像にあたった仏師にしても、単なる彫像として仏像を彫ったわけではない。「一刀三礼」という言葉があるとおり、ノミを刻むごとに祈りを込める、そういう心構えで彫った仏像でなくては、美しくも祈りに導く偶像になりえないであろう。しかし、仏像が持つそうした側面を私は見落としていた。」

  近年、仏像がにわかに脚光を浴びてきた感があります。とはいえ、これだけの「想い」を持って仏像を見ている人はどれだけいるのでしょうか。 自分もこの入江泰吉の見方に忠実にありたいと思っていますが、世間の勢いに流され、このような見方が出来なくなってきているのではないか、と自省してしまいます。
  日仏会のコンセプトとは微妙にずれた考えになってしまうのかもしれませんが、仏像を見るにあたっては、自分も含めて、ぜひともこのとき入江泰吉が気付いたことを忘れずにみてもらいたい、と強く思います。

  いずれにしても、書架に一冊、「あ、あるな」ということが確認できるだけで安心できる、そんな本でした。入江泰吉の写真を扱った本はほかにもいくつか保有していますが、いずれ劣らぬ名作ぞろい。文末のアソシエイトで紹介しておきます。

(文中敬称略)
   
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21/JUN 2009

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