冨貴寺といえば、国宝冨貴寺大堂であろう。阿弥陀堂建築の代表例として、国風文化の地方波及の典型例として、高校の歴史の教科書には必ずといって良いほど登場する。
そして、阿弥陀堂建築の中には阿弥陀如来、ということで、伏目丸顔、三角形の体躯、阿弥陀定印を結ぶなど定朝様のお手本のような阿弥陀如来坐像が一体、堂内に端座している。像高約85センチの榧材寄木造。大堂の造立年次とほぼ同じくして作られたと思われ、平安末期の作。
国宝大堂は西日本唯一の阿弥陀堂建築であり、九州最古の木造建築でもある。整然と並んだ瓦が美しかった。
堂内に微かに残る阿弥陀浄土の壁画も必見。
この「定朝様の阿弥陀仏&阿弥陀堂」という組み合わせは浄土思想と相まって、藤原時代に盛んに作られた。その中でもこの冨貴寺は九州の代表選手といえるだろう。(この他、信州代表の別所中禅寺、奥州代表は平泉中尊寺、そして京都代表の宇治平等院、日野法界寺、大原三千院などがある)
本堂や堂内の仏像ばかりで見落としがちだが、石造美術も随所に残されており、この地方でよく見られる国東塔はじめ、板碑や石仏が境内には散在している。本堂だけを慌しく見るのではなくて、それほど広くはない境内の雰囲気をゆっくり味わいたい寺である。
なお、大堂は堂内の壁画保存のため、風雪等の荒天時には公開を中止することもあるそうなので、予めご承知おかれたい。 |