真木大堂の前身は奈良時代元正天皇の養老年間に仁聞菩薩の開基で悲陀の匠が建立したと伝えられている伝乗寺である。往時は広大な境内の中に七堂伽藍を備えて隆盛を誇った大寺院であったが、約700年前に火災のため焼失。収蔵庫内の現存する九体の仏像は難を免れて今日に至っている各寺坊の本尊を一堂に集めたものである。
真木大堂といえば、やはり大威徳明王であろう。
大威徳明王とは写真を見ればわかるとおり、五大明王のうち、水牛に乗った六面六臂六足という、仏像の中でも極め付きの異形像だが、五大明王として造像された場合、左後方に位置するため、なかなかスポットが当たりにくい。東寺講堂の不動明王像は思い出せても、大威徳明王像を明確に思い描ける人は少ないのではなかろうか。
ところが、ここの大威徳明王像は五大明王像ではなく、あくまで独尊である。そして、何といっても大威徳明王としては「現存する日本最大」の像なのだ。
それも、ただ大きいだけでなく、藤原時代の洗練された中央の作風に全く遜色ないものであり、こんな像がこんな山の中に何故?としばし考え込んでしまう、そんな像である。
また、大威徳明王の他にも、ほぼ同時代の作と見られる丈六の阿弥陀如来、四天王像、不動明王像、いずれも見事な出来栄えで、収蔵庫からは立ち去り難い雰囲気があった。
大分の仏像を訪ねるのなら、ここを抜きにして考えることは、まずできないだろう。
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