「東京国立博物館 薬師寺展オフ」レポート


前日までの暖かさはどこへやら。寒空に戻ってしまい今にも雨が降り出しそうな上野駅前に集まった仏像ファン8名。

「はじめまして最高顧問です」

今回の参加者は名誉顧問・最高顧問以外は全員がオフ会初参加。
自分の企画したオフ会自体、これだけの人数になったのは初めてで、名誉顧問も「10年ぶり」とのこと。いったいどうなることやら。
  第2室。
  東塔水煙(模造)越しに、聖観音像が佇立しているのが見える。
水煙の説明もそこそこに、人だかりの観音の正面に立ってみた。

  そして、左側から回ってみて、驚いた。
想像以上に体躯が分厚いことにである。その腰まわりだけみれば、「慶派か?」とさえ思えるほどだ。
  元来、仏像は正面から拝むことを重視し、原初の仏像もそのように作られた。法隆寺の百済観音などはその好例。側面から見るとその非人間性が際立つ。

  ところが、この聖観音はそこからいくらも時代を経ていないのに、側面から見ても、後ろから見てもまったく不自然な感じを受けない均整の取れた体格をしている。正面観照性からの脱却、というものを文献で何度か目にしたことがあったが、やはりこうして実際見ると説得力が違う。
  そしてまた、光の当て方にかなりの工夫を凝らしているのだろう。その体躯は寺で見るような黒光りしたものではなく、像全体が銀灰色に輝いているようにみえた。要は、非常に全体像が見やすく明るい。このとき、聖観音の表情をはじめてはっきり見られた。

  薬師寺にはもう何度も行ったことがあり、この像も東院堂で幾度となくお目にかかった。もちろんそのときは厨子の中で正面だけしか見られず、また、自然光のみの堂内で、その表情もはっきりと汲み取れた記憶があまりない。この会場で再会しなかったら、先述のような体躯の厚さや表情にはまったく気づかないままで終わってしまっただろう。


  続いて第3室。
  薬師寺金堂から日光・月光の両脇侍像が東京初見参。
さぞかし置いていかれた薬師様はお寂しくしていらっしゃるだろうと、しょうもないことを考えながら、遠くから、近くからいろんな角度から見てみた。

  こちらも聖観音と同じくその姿は銀灰色に輝いている、寺で見るのとはちょっと違った印象。そして捕まったのは、やはり、数々の人たちからも言い尽くされているであろうそのお背中。
  美しい造形で。非人間的な大きさでありながら、すごく人間くさい質感があって。触ったときの感触がわかるような気がして。
官能的、という言葉だけでは片付けられない何かをその背中にみたような感じがする。

  その「背中」に引っかかってくれた人は他にもいたようで

「昨日見たNHKスペシャルで、「日光の背中は男性的、月光の背中は女性的」ってな解説がされていたのですが、薬師さん視点からの腰周りは大人の女性(日光さん)とギャルちゃん(月光さん)に見えました。日光さんのあの色っぽさ、羨ましいです!!!!」

  みんな似たようなことを考えているものだなぁ、と。ちょっと安心。

「さすがパトロンが国家だとゴージャスな美女揃い」(By宰淞さま)


  この後、宴会が予定されていたのだが、時間がやや早かったので、平常展を経由し、敷地内の法隆寺宝物館へ。

  正直なところ、飛鳥仏はそれ以降のものと比べて、あまり表情や動きがないのが災いしてか、あまり興味がわかない存在だった。それ以降の優れた仏像と比較するとどうしても稚拙さが目立ってしまうというか、そのあたりが原因だろうと思う。

  ところが、ここの仏像は同時代のものをそれこそ「力のかぎり」並べている。さすがにこれだけ並べられると、それぞれの像の表情やわずかな動きの違いなどがわかりやすい。

  とくに自分の中でヒットだったのは向かって右列一番手前にいた仏像。俗に「辛亥年銘観音菩薩」と呼ばれている一体。これは名誉顧問のお気に入りだそうだが、「まるでロケット噴射で飛んでいきそうな」その人間離れした体躯はもちろん、魅入られたのはその化仏。観音を示す標識、すなわち阿弥陀像が化仏として表現されるのだが、これがまた、小学生の落書きのような、いかにも「うっかり作り忘れたので、後から書き足しました」的な姿が笑いを誘う。
←こんな感じ。

  今後は博物館で飛鳥仏を見かけたときは素通りせずに、もっと時間をかけてその表情や化仏を(笑)楽しもうと思った。
その後は不忍口近くの居酒屋で1次会、次いで近くの別の店で2次会。
やはり普段の生活でこの嗜好を理解してくれる人が少ないせいだろうか。まさしく「水を得た魚」のように、皆、自分の仏像に対する熱い想いを語っていたように思う。気づいたら終電の時間が迫っていた。

今回の薬師寺展は確かに仏像もすばらしかったが、この「薬師寺展」を通してこんな人たちと知り合いになれたことも、同じくらいすばらしいことではなかったかと思う。

「おおっぴらに仏像話ができるシアワセ。
みんなの本当に楽しそうな顔、それが一番よかった」(By 名誉顧問)

文/最高顧問

以下、今回参加していただいた方からの感想です。

「初めての参加でしたが、濃い(?)=こだわりのある方ばかりで、お話していて楽しかったです。一言で仏像好きといっても、それぞれ色々な見方・楽しみ方があって、でも「仏像が好き!」の一点で意気投合してしまう。…仏さまが人を繋ぐ、でしょうか。
どうもありがとうございました。」


「『大きくてピカピカだぁ〜〜』初心者の私にはこんな子供のような言葉しか出てきませんでしたが、これが感動というものなのかも?」


「昨日(4月28日)、NHKスペシャル「日光・月光菩薩はじめての二人旅〜薬師寺1300年の祈り〜」放送してました。戦災で雨漏りする金堂、東塔のみしかない等々、40年前の薬師寺の映像はなかなか貴重でした。
そこから高田好胤管主を中心として再建する様子は、感動ものです。日光・月光菩薩を送り出す思いも伝わっていい番組でした。
昨日の放送で、「薬師寺展」は、大混雑しているでしょう。放送前に見ることができて良かったです。」


「まず、会場のアングルにやられました。
「なんか上ってるな〜〜」と思ってたら、正面に日光さんと月光さんのお顔がっ!
普段絶対に見られない視界からいきなり拝見させて頂き、まず感動。
足元をあんなに間近に見られたり、今回の目玉の背中も拝見できたり、また感動。恐れ多くも薬師さんポジションからお二方を拝見させて頂いたりして、更に感動。
薬師さん視点(にしては低いなぁ〜〜)から見たお二方は、私には母娘に見えました。美人姉妹のはずなのに?!」

日仏会へお便り

01 /MAY 2008

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