レポート「薬師寺展」 at 東京国立博物館

 −麗しの姉妹が上京!−
2008年春。東京は薬師寺まつり! 
名誉顧問は「薬師寺展」マスコミ内覧会に行ってきました
日光・月光の美人姉妹が、惜しげも無く妖艶な肢体をさらす!
そのようすをレポートします。 (写真は特別に許可を得て撮影したものです)

「はじめてのふたり旅、春の東京」

TEXT:名誉顧問

ふたりの菩薩が東京見物にやってきました。お供は聖観音菩薩。この三体は、東大寺の大仏さん(初代)よりずっと前に造られた、古〜い像。なのに、今見ても新鮮。
白鳳(飛鳥後期)時代の作か、平城遷都後の作かで論争があるものの、古い古い像であることに変わりありません。

今回の展示の特徴はふたつです。

1.ほどよい数の展示
これまで、平成館の特別展示は、ものが多すぎてヘトヘトになりませんでしたか? そこいくと「薬師寺展」は、じっくり見た後でもデートや飲みに行ける余力が残るというありがたさ。体力に自身のない人も安心です。

2.前から後から姉妹を総ナメ!
お堂での拝観は、正面からだけでした。今回はあえて光背をはずし、後にまわってみることも可能。背中の美しさは必見! マニア心をくすぐる演出ですね。

では会場へ入りましょう!


●いきなり登場! 観音王子

会場へ入ると、立ちはだかる朱色の柱と白い壁。これは、薬師寺を実際に訪れて、伽藍を訪ね歩く気分を味わってもらうためらしいです。

最初にあるのは薬師寺鎮守の八幡神像。日本の八幡神と仏教は関係が深い。神像からは、ただならぬ気を感じます。休ヶ岡(やすみがおか)八幡という名前にも、個人的な親近感を感じます。

次のコーナーは、いきなり東院堂! しょっぱなから、メインディッシュいっちゃっていいのか? この、出し惜しみしない態度がいいです。
しかも、間近でじっくり対面でき、後姿もばっちり。白鳳期といわれる古様の姿を存分に味わってください。
東院堂の聖観音像。いつみても元気そう。スッと直立している姿勢が特徴ですが、よくみるとわずかに腰を傾けているのがわかりました。肩に垂れる長髪もイイ!


客を迎える王子。台座の華麗な彫刻は、ヨーロピアンテイストさえ感じるほど

左右対称の衣のハネ具合が、飛鳥の古い様式を伝えている


●妖艶な美人姉妹・日光&月光菩薩

スロープをあがると、もう日光・月光(がっこう)両菩薩がお迎え。ここも出し惜しみしない。しかも、わざわざスロープを上がって、高い目線で見せ、下に降りて近くで見るという、二段階構成です。
大きいのに軽やかさを感じさせる名像に、しばし見入りました。


観客のカーテンコールに応える美人姉妹
 

報道陣のカメラにポーズをとる日光菩薩



腰をキュッとひねった躍動感のある表現は、インドのグプタ様式に通じているそうです。
後や横から見ると、いろんな発見があります。背中の肉付きのセクシーさ。瓔珞とはちがう、チェーンのような飾り。
お寺に戻ったら、もう見られませんよ。


この背中! なんてセクシーなの!
金属製とは思えない、柔肌の質感。

腕にかかる天衣(てんね)の先は、
台座にまで垂れていたんですね

繊細な指先の表現にも注目


●もうひとりの主役・吉祥天

反対側へまわり、薬師寺の歴史を伝える展示のあとは、もう一人の主役、吉祥天画像がお目見え。奈良時代の麻布着色。実物を見る前に、「ここに注目」といったパネルがあり気分を高めます。

実物は、暗〜いコーナーにぼうっと光があたっていて、そこにある。けっこう小さいです。 皆、顔をすりつけるように近づいて、なめまわすように見ています。ああ〜視線でいたぶられる吉祥天。美しさゆえの痛い視線。
たぶん会期中は行列でしょうね。

最後に、「薬師寺展」の図録。
本尊の薬師如来を含め、あらゆる角度で撮った写真があり秀逸です。薄いので飲み会に行っても負担にならない(笑)。
三蔵法師から始まる法相宗や、唯識思想の話、薬師寺像の制作年代論争の話もたっぷり。仏教マニアや古代史マニアの方もしっかり満足。


そんなわけで、非常に楽しめる「薬師寺展」。
お寺のお堂で拝む厳かな感じとはやはりちがいます。ま、とやかく言うより、これはこれで、楽しんでしまったほうがよいのではないでしょうか。




2008/4/1  宮澤やすみ(日仏会名誉顧問)



リンク:
薬師寺展公式サイト

名誉顧問(宮澤やすみ)の著書『はじめての仏像』好評発売中!


02/APR/2008

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